2050年カーボンニュートラル実現のための需要家側のアクションとして、「徹底した省エネ」と「非化石エネルギーの導入拡大」が必要とされています。つまり、省エネですべてのエネルギーの効率化を進めると同時に、太陽光発電や風力発電といったCO2を発しないエネルギーへの転換を図るということです。
省エネ法の「エネルギー」を再定義
こうした背景から、需要家にエネルギー利用の効率化を促す「省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)」の適切なあり方を模索する検討がスタートしています。そもそも省エネ法とは、二度のオイルショック後、化石エネルギーを効率よく使用するために1979(昭和54)年に定められたもの。現在の状況とは法律の趣旨が大きく異なります。
省エネ法では、事業者全体のエネルギー使用量が原油換算値で1,500kL/年を超える特定事業者に対し、エネルギー使用量の算出と報告を義務付けています。今回、経済産業省が見直しを検討するのは「エネルギー」の定義です。現行では、石油や天然ガス、石炭といった化石エネルギーを「エネルギー」と定義し、再生可能エネルギーなどは対象外とされています。
(出典:資源エネルギー庁 省エネポータルサイト『省エネ法の概要 | 事業者向け省エネ関連情報』)
しかし、省エネに当たっては化石・非化石といった由来に関わらずすべてのエネルギーの利用を効率化する必要があるとして、再生可能エネルギーなども含める方向に見直されると考えられます。
系統電気は全電源係数を適用の方向へ
一方、需要家が小売電気事業者から購入した電力を原油換算する際には、電源種別に関わらず火力発電由来と仮定した係数を一律で使用することになっています。これは送配電ネットワークを介して供給された電気を発電種別ごとに分類することが難しいための措置ですが、便宜的とはいえ、再生可能エネルギー由来の電力に火力発電由来の係数を用いることは適切ではありません。
(出典:経済産業省 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会)
そのため、2021年6月30日の経済産業省・第35回省エネルギー小委員会では、この係数を見直し「全国一律の全電源平均係数を基本とする」方向性が打ち出されました。制度変更は早くて2023年度から行うとし、3年間程度の移行期間が設けられる見込みです。
見直しに当たっては、各発電種別の発電効率や海外の同様の制度について考慮しながら進めるとされています。また、再生可能エネルギーの自家消費(オンサイト)と系統を介した調達(オフサイト)の双方における取扱いも注目のテーマとなりそうです。
需要“平準化”から“最適化”へ。カギはデマンドレスポンス
さらに、これまでの省エネで主流だった需要平準化という考え方を一歩進めた「需要最適化」という枠組を設けることも示されています。需要最適化とは、太陽光発電などが余剰するタイミングに需要を増やし、逆に需給ひっ迫次には需要を減らすなど、供給に応じた上げ・下げデマンドレスポンスなどによって需要をコントロールしようとする考え方です。
(出典:経済産業省 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会)
この際、需要家のデマンドレスポンスなどを促すトリガーとして電気換算係数を用いる案が提示されました。例えば、太陽光が余剰している出力抑制時には係数を低く、需給ひっ迫次には火力平均係数にプラスアルファを加算したものとする例が示されています。
仮に、この案が制度化されるとすれば、デマンドレスポンスの重要性はさらに高まると考えられます。コージェネレーションシステムや蓄電池などといったリソースが、脱炭素を加速するカギを握るといっても過言ではないでしょう。
本ブログでは、こうした省エネ法の見直しの動向についても引き続きご紹介していきます。脱炭素対策をお考えの方は、専門知識の豊富な当社スタッフがサポートさせていただきます。どうぞお気軽にお声かけください!