「ポジワット型ディマンドリスポンス」とは
2019年7月18日、省エネルギー技術戦略2016」の「重要技術」が改定され、調整力が重要技術とされました。調整力とは、エネルギーシステム全体での電力の需要と供給を調整、最適化する機能を指します。今回は、調整力の中でも今後注目されるであろう「ポジワット型ディマンドリスポンス」について見ていきましょう。
そもそもポジワットとは、広義では「電力を消費すること」です。対義語の「ネガワット」は、省エネなどにより「電力の消費を抑制すること」ですので、対比するとイメージをとらえやすいですね。「ポジワット型ディマンドリスポンス」とは、電力が「需要<供給」となりそうな場合に電力をより多く使い、需要と供給のバランスをとることです。
例えば、太陽光の発電量が多い5月のゴールデンウィークのケースを考えてみましょう。発電量が多いにも関わらず、工場などが休業で需要が少ないと「需要<供給」となりバランスがとれません。このとき、止まっている生産ラインを動かしたり、発電機を止めて系統からの購入電力量を増やしたりすることが「ポジワット型ディマンドリスポンス」です。
ポジワットに関連する新しいビジネス
ポジワットは、遊休の生産ラインの稼働や発電機の停止などによっても生み出されます。しかし、もっと私たちの身近なものによってもポジワットを生み出すことができるのです。
2019年5月には、四国電力が家庭の電気給湯器を使ってポジワットを生み出す実証試験をスタートしています。通常であれば電気給湯器は、電気を使うことが少ない深夜などにお湯を沸かすように設定されています。この実証では、気象予報に基づいた太陽光発電量の予測を参照し、昼間にお湯を沸かすなどのコントロールを行うものです。
こうした制御によって昼間の電気の需要が増え、太陽光による発電量が適切に使われることで、ネットワーク全体のバランスが守られます。今後はこのような取り組みが電気給湯器だけでなく、電気自動車などにも波及していくものと考えられます。
その波及の過程では、コントロールのための通信規格の整備や、コントロールの役割をになうプレーヤーなど、新しいビジネスチャンスが多く生まれると期待されています。これからもポジワットをめぐるビジネスに注目していきましょう。