東京商工リサーチが、小売電気事業のみを行う専業の新電力について、2021年は過半数の企業が赤字に陥ったとリポートしました。新電力の事業撤退は止まるところを知りません。6月末で供給停止を発表する新電力が続出する中、需要家がとるべきアクションとは何かを考えます。
“新電力専業”企業の赤字率は6割に届く勢い
東京商工リサーチは2022年4月26日、小売電気事業のみを営む新電力の2021年(2021年1〜12月)の決算について、半数を超える56.3%が赤字だったと報告しました。これは、小売電気事業のほかに主たる事業を行っていない、いわゆる“新電力専業”の企業212社を対象に調査したものです。
前期(2020年1〜12月)の赤字率が24.1%だったことを考慮すると、今期は、赤字企業の割合が倍増しています。さらに、2021年に倒産した新電力は14社にのぼったとされ、事業運営に苦しむ小売電気事業者の姿が浮き彫りになりました。
(参考:東京商工リサーチ『新電力の決算、赤字率6割に迫る 2021年「新電力専業企業212社 業績動向」調査」』)
多くの専業新電力が赤字に転落した原因は?
新電力を含む小売電気事業者の多くは、日本卸電力取引所(JEPX)から電気を調達しています。資源エネルギー庁によると、総電力需要量に占めるJEPXでの取引割合は近年、40%前後で推移を続けています。
出典)資源エネルギー庁 第48回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 「資料3-1」より抜粋
2016年4月の電力小売全面自由化が始まった頃と比べると、はるかに多量の電気がJEPXを通して取引されるようになりました。つまり、現在は、多くの小売電気事業者がJEPXから電気を調達している状況なのです。
しかし、2020年末から2021年初頭にかけて起こった異常な市場価格の高騰を皮切りに、JEPXの取引価格は高い水準が続いています。2021年6月からは、平常時のインバランス料金の上限価格が80円/kWhとなり、異常なほどの高騰はなくなりましたが、それでも足元の取引価格の平均は17.4円/kWhです。
出典)資源エネルギー庁 第48回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 「資料3-1」より抜粋
このように、調達原価であるJEPXの市場価格高騰が小売電気事業者の経営に大きなダメージを与えていることは言うまでもありません。
また、ここ数年で激化した小売電気事業者同士の価格競争の影響も相まって、販売価格を調達原価が上回る逆ザヤの状態に陥っている小売電気事業者が大多数であると思われます。
続発する新電力の事業撤退に需要家がとるべきアクションとは
こうした背景から、契約中の電気料金の値上げに踏み切る小売電気事業者もいるとされています。どれくらいの値上げになるかは小売電気事業者によってさまざまですが、中には最終保障供給を超える料金を提示する場合もあるようです。
さらに、契約中の需要家への電気の供給を停止する小売電気事業者も続々と増えています。特別高圧や高圧だけでなく、家庭を含む低圧の供給停止を明らかにした事業者も多く見受けられます。新電力の事業撤退などの状況については、こちらの記事でもご紹介しておりますので、合わせてご覧ください。
(リンク『電気代高騰の背景にある「燃料費調整額」とは? 上限撤廃となるのか』)
事業撤退を表明した小売電気事業者の多くは、電力需要が大きく膨らむ夏季を前に供給を停止すると見られます。したがって6月末での供給停止を宣言している事業者が多く、契約中の需要家は、遅くとも6月上旬までには新しい契約先へ切り替えの申し込みをする必要があるといえるでしょう。
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