2023年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)が1kWhあたり1.40円と発表されました。これは制度開始以来、初めての減額です。これまでの再エネ賦課金の単価の推移を振り返り、なぜ減額になったのか、今後の再エネ賦課金の見通しについて考えます。
2023年度の再エネ賦課金は1.40円/kWhに減額
経済産業省は2023年3月24日、2023年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金単価)単価が1kWhあたり1.40円になると発表しました。2023年5月〜2024年4月検針分の電気料金に対して適用されます。
2022年度の再エネ賦課金単価は3.45円/kWhだったため、1kWhあたり2円近く減額になりました。これは、再エネ賦課金が始まった2013年度以来、初めてのことです。これまでの再エネ賦課金単価の推移は下表の通りです。
(再エネ賦課金単価の推移(単位:円/kWh)。資源エネルギー庁WEBサイトより筆者作成)
再エネ賦課金はなぜ減額になったのか
(再エネ賦課金単価の算定根拠。出典:資源エネルギー庁)
2023年度の再エネ賦課金が減額になった理由として、市場価格の高騰が挙げられます。というのも、再エネ賦課金単価を算定する計算式は、FIT・FIP買取費用の総額から「回避可能費用等」を差引きし、事務費用を加算したうえで、販売電力量で割って算出します。
「回避可能費用等」とは、FIT・FIPによる発電量が火力発電などの他の発電手段によって生み出された場合の発電コストを指します。このコストは、過去の日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格から算出されることになっています。2022年度は、世界的な燃料価格の高騰などによって市場価格が高かったため回避可能費用等が大きく膨らみました。その結果、再エネ賦課金単価が引き下げられたと考えられるのです。
その証拠に、回避可能費用等は2022年度の想定では1兆4,609億円でしたが、2023年度には3兆6,353億円に想定が改められています。2兆円あまり増額したことになり、再エネ賦課金単価を引き下げたと考えるのが妥当でしょう。
今後の再エネ賦課金単価はどうなる?
資源エネルギー庁が2018年に公表した再エネ賦課金単価の予測によると、2030年年度の再エネ賦課金単価は1.2円/kWhになるとされています。しかし、この予測は国全体のエネルギーミックス(電源構成)における再生可能エネルギーの比率が24%の場合のシミュレーションです。
(再エネ賦課金の推移イメージ。出典:資源エネルギー庁、2018年8月)
2021年に改訂された第6次エネルギー基本計画では、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を36〜38%にまで引き上げるとされています。この目標実現のためにFIT・FIP電源の導入が増加すれば、それに伴って再エネ賦課金が上がる可能性も否定できません。
また、前述の通り、再エネ賦課金は年度当初に推測値に基づいて算出されます。そのため、推測値と実績値の差分は翌々年度の再エネ賦課金単価によって調整することになっています。したがって、もし2023年度の1.40円/kWhという再エネ賦課金単価で買取費用をまかなうことができなければ、翌々年度の再エネ賦課金単価が上がる可能性もあるのです。
その一方で、FIT・FIP制度に頼らない再生可能エネルギーの導入が増えれば、再エネ賦課金単価が大きく上昇するということを避けることができるかもしれません。いずれにしても、今回の再エネ賦課金単価の減額は市場価格の高騰による一時的なものであり、今後の単価の推移は引き続き注視する必要があると言えるでしょう。