経済産業省は、小売電気事業者の需要家に対する説明義務に、料金の算定方法や変動の理由、上限の有無などを説明義務に追加する考えを示しました。今後「電力の小売営業に関する指針(小売ガイドライン)」を改定し、説明内容や表記方法を「望ましい行為」に位置付ける方針です。
説明義務に料金の算定方法や変動理由を追加へ
経済産業省は8月8日、第64回電力・ガス基本政策小委員会を開催し、小売電気事業者の需要家に対する説明義務に、料金の算定方法や変動の理由などを加える考えを示しました。新たな説明義務の案としては、変動料金の算定方法について過去の燃料単価や市場価格を当てはめて具体的な変動額を示すことや、上限の有無などが挙げられています。具体的な説明内容や表記方法については、今後、「電力の小売営業に関する指針(小売ガイドライン)」を改定して「望ましい行為」に位置付ける方針です。
近年、世界的な燃料価格の高騰から、多くの小売電気事業者が値上げに踏み切っています。2023年6月からは、家庭向けの規制料金で北海道電力、東北電力、東京電力エナジーパートナー、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の7社が値上げを実施しました。こうした背景から、経済産業省は、需要家が電気料金メニューを選択する際、料金の変動性や小売電気事業そのものの安定性が重要性を増していると指摘しています。
説明の“わかりやすさ”を追求
さらに、今後は「小売ガイドライン」を改定し、具体的な説明内容や表記方法を「望ましい行為」に位置付けるとしています。「小売ガイドライン」への追加が予定される内容は、以下の通りです。
①小売料金が燃料や電力の価格により変動する場合の説明内容
・燃料費や市場価格の変動を料金に反映するための算定方法や係数の考え方について、グラフ等を用いてその因果関係について説明すること。
・過去の燃料価格や市場価格の変動推移と料金の推移及びその関係性についてのグラフ等
を用いてその因果関係について説明すること。
②小売事業者等が需要家に契約内容を説明するに当たっての説明方法及び程度
・高齢者や適切な判断を欠く懸念がある方への説明・勧誘に当たっては、専用の資料を用意
した上で、本人の意思に応じてより丁寧かつ詳細な説明を行うとともに、求める説明を行ったことを確認する。
・目や耳が不自由な者等に対する説明・勧誘に当たっては、筆談、読み上げなど多様なコミュニケーション方法や分かりやすい表現を使って説明する、見えにくさに応じた情報の提供(聞くことで内容が理解できる説明・資料、拡大コピー、拡大文字又は点字を用いた資料等)するなど、需要家の状況に配慮した説明・勧誘を行う。
③事前交付書面における「特に重要な事項」の例
・料金(算定方法を含む)、料金の変動性、料金等の支払方法、違約金
(出典:資源エネルギー庁)
小売電気事業者が需要家との契約にあたって事前に交付することが義務付けられている「事前交付書面」については、読みやすい字の大きさ(8ポイント以上)なども細かく指定されました。書面に記載するだけではなく、需要家にとって本当にわかりやすい伝え方になっているかどうかが、より重視される方向性となっています。
小売電気事業者の事業実態も公表の考え
電気料金はすべての需要家に関係のあるものですが、現在の電気料金の仕組みは必ずしもわかりやすいものではありません。今年6月の大手電力会社7社の規制料金の値上げの際には、消費者委員会から需要家への説明が不足しているとの指摘もありました。
これを受けて、経済産業省は今後、WEBサイトで小売電気事業者の事業運営状況に関する情報も公表していく考えを示しています。具体的には、小売電気事業者として登録されているものの事業の実態がない事業者については、その旨をわかるように表示するとのことです。
「小売ガイドライン」の詳しい改正内容やスケジュールは、これから検討されるとみられます。小売電気事業者が注目すべき議論がしばらく続くため、本ブログでは引き続き、検討の行方をチェックしてまいります。