経済産業省が主導するGXリーグ内に設置された「グリーン商材の付加価値付け検討ワーキンググループ」は、商材のグリーン価値をを表す指標として、実際の二酸化炭素(CO2)排出削減量のことを「デルタCO2」と定義することなどを提言しました。「デルタCO2」とは何か、同ワーキンググループの報告書のポイントを読み解きます。
新たな市場の形成のためのワーキンググループが提言
GXリーグは、GX(グリーントランスフォーメーション)に挑戦する企業が官学とともに協働する場として、経済産業省が中心となって設置しているものです。2023年10月には、GXリーグの一環として、東京証券取引所にカーボン・クレジット市場が創設されました。他にも、カーボンニュートラルに向けた新たな市場の創造のためのルールメイキングや、ビジネス機会の創造・共有の場、参画企業の交流の場として活用されています。
日立製作所など4社は2023年3月、グリーン商材に関する新たな市場を形成するための提言を行うため、GXリーグ内に「グリーン商材の付加価値付け検討ワーキンググループ(WG)」を設けました。同WGでは、脱炭素に積極的な企業の製品やサービスのもつ「グリーン価値」が社会経済から評価されるには、どのような仕組みが望ましいかについて議論が行われていました。なお、グリーン価値とは「製造から廃棄・再利用の工程に付随する環境負荷の低減価値」のことだとしています。
企業がグリーン商材の市場を拡大するインセンティブに
同WGが2024年1月29日に発表した最終報告書では、まず、環境にやさしいグリーン商材の価値を明確にするには何らかの指標が必要であるとして、実際の二酸化炭素(CO2)排出削減量のことを「デルタCO2」と定義することを提言しました。具体的には、カーボンフットプリント(CFP)として算定されたCO2排出量をベースラインとして、そのベースラインから、企業努力によって削減したCO2排出量との差を「デルタCO2」とするとのことです。
その背景として、現在、企業のCO2排出削減による価値を示す指標として使われているCFPには、次のような課題があると指摘しています。企業がCFPを計算する際には、サプライチェーン全体のCO2排出量を実測して集計することが難しいため、CO2排出原単位などの推計値が多く用いられています。その結果、企業努力が反映されにくく、企業がグリーン商材を増やしてCO2削減に取り組もうとするインセンティブが働きにくいというのです。
こうした課題を解決するため、「デルタCO2」を指標として適切に認識・活用することや、サプライチェーン全体のグリーン価値を評価すること、グリーン商材の市場を拡大するにあたって、さまざまなインセンティブを講じることなどを提言しました。
今後は、5種類のグリーン商材について、実証事業、認証事業の新展開、国際標準化の取組みを推進するとのことです。GXリーグから生まれた提言がどのようにルールメイキングに組み込まれていくのか、引き続き注目していきます。