求められる自動車部門のCO2抑制、東京モーターショーにも反映
パリ協定を受け、翌年2016年5月に策定された「地球温暖化対策計画」では、2050年までに温室効果ガス80%削減という目標を掲げています。しかし、2019年9月に国連で開催された「気候変動サミット」などの影響により、この目標の前倒しが世界的な潮流となりつつあります。今後CO2の排出抑制は、今までよりさらに重要性を増していくと考えられます。
国内に目を向けると、2017年度の全国のCO2排出量のうち、最も多くを占めるのは製造業などの産業部門で34.7%。次いで自動車や航空、船舶などの運輸部門が17.9%を占めています。さらに、 運輸部門の中では、8割以上が自動車によるものです。自家用自動車によるCO2排出量は重量に換算すると、年間9,850万トン。産業部門と同様に運輸部門、とりわけ自動車において化石燃料からの転換が強く求められています。
2019年10月24日(木)から11月4日(月・祝)の期間、東京ビッグサイト等で開催されている「第46回東京モーターショー2019」においても、環境性能の高いさまざまな新しい車種が発表されています。特に、展示ブースでトヨタが新車発表を行わず、新型モビリティのみの展示を行っていることは大きく注目されています。
EV普及を阻む課題、充電インフラ整備の重要性
しかし、自動車のうちガソリン車などのICE(インターナル・コンバッション・エンジン:内燃機関)車の占める割合は大きく、2017年度実績では63.3%。ハイブリッド自動車(HV)・プラグインハイブリッド自動車(PHV)・電気自動車(EV)・燃料電池自動車(FCV)・クリーンディーゼル車(CDV)などの次世代自動車が36.7%という現状です。ちなみに全世界で見るとICEは96%を占めており、まだまだガソリン車が優位の状況と言わざるを得ません。
一方で、国内の次世代自動車の販売状況は、2017年度で約160万台。新車販売台数に占める割合は40%弱です。このうちのほとんどがハイブリッド自動車(HV)であり、電気自動車(EV)などのシェアは1%にも達していません。
これに対し、国はEVに最大40万円、PHVに最大20万円の導入補助金やエコカー減税などを実施し、普及拡大を促進しています。また地方自治体なども、国の補助金と併用可能な助成制度を実施したり、充電器の設置にも補助制度を設けたりと、積極的な後押しを行っている状況です。
次世代自動車向けの充電器は国内に3万台ほど設置されていますが、充電スポットとしては1万8,000件ほど。単純に割り返すと、1スポット当たりの充電器は1.6台ほどとなります。既存のガソリンスタンド1か所と比較すると、充電器の数そのものがまだ少ない印象です。今後の課題としては、充電時間の短い急速充電器の普及のほか利便性の高い充電スポットの整備など、EV利用者の声に耳を傾けながら普及を進める必要があるといえます。
次回は次世代自動車の中でも電気自動車(EV)にフォーカスし、移動手段という単一の用途にとどまらない「マルチユース」の可能性について考えます。