経済産業省・資源エネルギー庁は2026年1月23日、非化石価値取引市場の上下限価格について、見直しの方向性を明らかにしました。FIT証書と非FIT証書の具体的な見直し内容について、議論の詳細をリポートします。
資源エネルギー庁が下限価格への張り付き是正へ
資源エネルギー庁の制度検討作業部会は、非化石価値取引市場の約定価格が下限価格に張り付く傾向にあることを問題視し、上下限価格の見直しに着手しています。昨年12月に検討を開始しましたが、これまでの議論についてはこちらの記事を併せてご覧ください。(参考:資源エネルギー庁、非化石価値市場の上下限価格の見直しに着手| Reivalueメディア)
(非化石価値取引市場における上下限価格の推移。出典:資源エネルギー庁)
非化石価値取引市場の上下限価格をめぐっては、これまでにも、再エネ大量導入・次世代ネットワーク小委員会などで複数回の議論が行われてきました。上図の通り、2018年5月に非化石価値取引市場が創設された際は、FIT証書・非FIT証書の上限価格はともに4.0円/kWhでした。2021年11月に、FIT証書を扱う再エネ価値取引市場と非FIT証書を取引する高度化法義務達成市場に分けられた際には、再エネ価値へのアクセスを向上してほしいという需要家のニーズに応え、再エネ価値取引市場の下限価格を0.3円/kWhと大幅に引き下げました。高度化法義務達成市場では、事業者の予見性を確保するため、下限価格を導入し、上限価格を1.3円/kWhに引き下げるといった措置が行われてきた経緯があります。
FIT証書の“市場の歪み”を是正 下限価格を段階的に見直しへ
今年1月23日に開催した会合では、再エネ価値取引市場、高度化法義務達成市場のそれぞれについて、具体的な見直しの方向性を示しました。
まず、FIT証書を扱う再エネ価値取引市場についてです。そもそも、再エネ価値取引市場は、需要家が再エネ価値にアクセスしやすくするために整備されたものです。需要家の価格競争力に影響することがないようにとの配慮から、価格水準は比較的低く抑えられ、現在の下限価格は0.4円/kWhです。
その一方で、FIT証書を安価に調達できることが、需要家が電力購入契約(PPA)を締結するインセンティブを阻害する要因になっているとの見方もあります。また、高度化法義務達成市場の価格水準がより高いため、需要家に対して非FIT証書の価値を訴求しにくいという側面もあります。会合では、こうした市場の歪みを是正すべきと指摘されました。
なお、PPAとは、エネルギーサービス事業者と需要家との契約で、需要家は再エネの電気を使用した分だけサービス料金を支払います。初期投資の必要がなく、契約によっては長期間にわたって再エネの電気を調達できるメリットがあります。PPAは、需要家の再エネ導入やCO2削減の手段の1つとして期待されています。
こうした課題を受けて、再エネなどの非化石電気を維持・確保する投資を促す観点から、今後は、再エネ価値取引市場の下限価格を段階的に見直すとともに、上限価格の是非などを検討するとされました。検討にあたっては、小売電気事業者や需要家の負担に配慮するとされています。
今後の争点は両市場の下限価格
続いて、非FIT証書を取引する高度化法義務達成市場についても、非化石電源の維持・拡大が進むような見直しが必要として、下限価格のあり方を検討するとしました。現在、高度化法義務達成市場の下限価格は0.6円/kWhと、再エネ価値取引市場より高く設定されています。一方で、上限価格は当分の間、現在の水準である1.3円/kWhを維持するとされました。
今回の会合で示された方向性によると、注目すべきポイントは両市場の下限価格になりそうです。再エネ価値取引市場と高度化法義務達成市場とで下限価格が統一されるのかどうか、今後の動向を引き続きリポートしていきます。
(参考:経済産業省・資源エネルギー庁 第110回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会)
