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容量市場、高値約定に衝撃。入札ルール見直し、電気代への転嫁は?

落札額はほぼ上限価格

2020年9月14日、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が容量市場メインオークションの落札結果を発表しました。2024年度を実需給年度とする初のオークションには、各方面から大きな注目が集まりました。8月末に発表される予定の約定結果が延期されたこともあり、多くの人が入札結果を待ち望んでいました。

初めての約定価格は、上限価格より1円安い1kWあたり1万4,137円。約定総容量は全国で1億6,769万kWとなりました。目標調達量(1億7,746万kW)の94%を確保できたという意味では、成功といえるかもしれません。しかし、多くの有識者の予想に反して高額での約定となりました。海外でもここまで上限価格に近い落札例は少ないといいます。では、なぜこのように高値での約定になってしまったのでしょうか。

「逆数入札」で高値の札が集まる

実は、OCCTOによると応札価格の78.5%がゼロ円での入札でした。その一方、上限価格付近には複数の札が集まりました。約定価格を釣り上げたのは、この上限価格付近の入札だと分析されています。上限価格近くの入札が多かった理由は「経過措置」と「逆数入札」という2つの仕組みにあります。

「経過措置」とは、容量拠出金を支払う小売電気事業者の負担を軽減するための、いわば激変緩和措置。2020年度末までにできた発電所の契約額を、2030年まで42%減額するものです。容量市場の本来の目的は、発電所の維持や新設の費用確保。減価償却の進んだ発電所の維持コストは減額されるはずでした。

しかし、この経過措置の効果を打ち消すのが「逆数入札」です。2020年度より前にできた発電所でも、ある程度の維持コストを確保できるように考えられた仕組みです。減額対象の発電所も割引分の逆数、1から0.42を引いた0.58を乗じて入札できるようになりました。割引を前提とするため、実際の維持コストよりも高額で応札することができます。

電力・ガス取引監視等委員会では、逆数入札による上限価格に近い額での応札が複数あったため、約定額がつり上がったと分析しています。また、OCCTOは14,000円/kW以上の応札容量のうち、95%以上が石油やLNGによる火力発電所だったと報告しています。

あいまいなコスト算出根拠

約定価格が高かったのは、発電所の維持コストの算出方法があいまいだったことにも起因しています。発電所の維持コストは入札価格を決めるための根拠となるものです。

しかし、「容量市場における入札ガイドライン」では、こうした算出方法について、まだはっきりと定義されていません。今回のメインオークションは2024年度という単年度を対象としているにもかかわらず、複数年の定期検査コストを計上した事例もあったといいます。監視等委員会では、来年度に向けてガイドラインを見直し、算出方法を明確にする方向性です。

 

今回の約定結果によって、小売電気事業者が負担する容量拠出金は、全国で1兆4,650億円にのぼる見通しです。1kWhに換算すると、高いケースでは3円/kWhを超えるという見方もあります。仮に容量拠出金が電気代に転嫁されると、最終消費者の負担増につながります。初めての容量市場メインオークションの結果は、大きな疑問の残るものとなってしまいました。詳細の原因分析と早急な制度の見直しが求められます。

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