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注目される容量市場~①位置付けと背景~

2020年の創設に向けて準備が進められている容量市場。電力広域的推進機関(OCCTO)は、2019年8月27日に再び説明会を開催すると発表しました。2019年に入り、すでに3月、4月、7月、8月と、複数回の説明会が開催されています。
今回は、注目の容量市場について解説します。

容量市場の位置付け

電源等の価値は、次の4つの価値に分かれるとされています。
①電力量【kWh価値】:実際に発電された電気
②容量(供給力)【kW価値】:発電することができる能力
③調整力【△kW価値】:短時間で需給調整できる能力
④その他【環境価値】:非化石電源で発電された電気に付随する環境価値

それぞれの価値は、個別の取引市場において取引されます。
①電力量【kWh価値】→卸電力市場
②容量(供給力)【kW価値】→容量市場
③調整力【△kW価値】→需給調整市場・調整力公募
④その他【環境価値】→非化石価値取引市場

このうち、①kWh価値と④環境価値はすでに取引が始まっています。④環境価値を扱う非化石価値取引市場は、以前、本ブログでも説明したとおりですね。③△kW価値は調整力公募というかたちで、すでに2017年度からスタートしています。しかし、現在は一般送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど)による公募のため、同一エリア内での公募です。需給調整市場が創設されれば、エリアを越境した取引が可能となる予定です。

なぜ容量市場は必要か

2000年に始まった電力自由化は、2020年の送配電部門の法的分離に向け、さまざまな変革が進められています。この自由化の流れの中、安定供給のために容量市場の導入が検討されています。

少しだけ、発電事業者の立場になって電力自由化を考えてみましょう。新たな発電所の建設には膨大な費用が発生し、その投資回収は非常に重要な問題。投資コストを回収するためには、発電した電気を販売して得られる売電収入しかありません。

このとき、売電収入が将来的に値下がり傾向にあるとすれば、発電事業者は新たな発電所の建設を取りやめてしまう可能性があります。電力自由化や再生可能エネルギーの導入拡大等によって、電力量(kWh)を取り扱う卸市場の厚みが増すと、市場価格は低下する方向にあり、電源の投資予見性の低下が懸念されています。そしてまさに、現在がこの状態であるといわれています。

現在存在するのは、発電された電力量(kWh)を取り扱う卸電力市場のみ。発電事業者は卸電力市場から得られる売電収入などで投資回収をします。市場利用が活性化すれば、市場価格は下落傾向になるとされており、発電事業者にとっては芳しくない状況に。

発電事業者が新しい発電所への投資を渋り、既存の経年した発電所を使い続ければ、供給能力に問題が出てくる可能性もあります。発電能力を超える需要が発生する需給ひっ迫や、中長期的な供給力不足、さらには卸電力取引所の価格高騰などさまざまな影響が懸念されます。このため、容量市場が必要とされているのです。

次回、容量市場とはどのような仕組みになるのか、誰がどうやって参加するのかについて説明します。

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