CO2の削減量をクレジットとして取り引きする「カーボン・クレジット市場」を創設する方向性が見えてきました。カーボンニュートラルの実現に向けて、経済産業省が明らかにしたものです。2021年7月1日に開催された第6回・世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会から抜粋してご紹介します。
CO2削減価値を取引「カーボン・クレジット市場」
同研究会では、カーボンニュートラルを目指す政策の方向性として、現在の国内クレジット市場を活性化させるとともに、中長期的に脱炭素を促す枠組みを新しくつくることを打ち出しています。
新しい枠組みのひとつが「カーボン・クレジット市場(炭素削減価値マーケット)」です。日本で削減されたCO2が商品として国際的に売買されるような仕組みを想定しています。
(出典:経済産業省 第6回・世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会)
このような新市場が整備されれば、CO2削減の取り組みを進める企業にとってインセンティブとなることに加え、水素・アンモニアやCCUS(二酸化炭素回収・貯留技術)といった日本のテクノロジーの実装につながるとしています。
海外ではすでにこうした動きが活発で、欧州では「EU域内排出量取引制度(EU-ETS)」が2005年から開始されています。米国カリフォルニア州でも州レベルでの排出量取引制度が2013年からスタートしています。
日本でも、現在運用中のJクレジット制度やJCM(二国間クレジット制度)との整合を図りながら、新市場の設計を進めることが予想されます。
脱炭素に積極的な企業に資金集まる仕組みも
同研究会ではカーボンニュートラルの取組みに野心的で先駆的な企業が高く評価され、資金を集めやすくするような枠組みを設定することも必要ではないかという意見が挙がりました。「CNトップリーグ(仮称)」と呼ばれるこうした枠組みを創設し、脱炭素に積極的な企業を支援する考えが示されています。
(出典:経済産業省 第6回・世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会)
こうした動きの背景には、2021年4月に金融庁が言及したグリーンボンド(環境債)の国際取引マーケットである「グリーン国際金融センター」の構想があります。グリーンボンドとは、環境関連の事業に特化した債権で、ESG債のひとつと位置づけられています。(参考『加速する“ESG債”発行の動き、国内でも続々と』)
3000兆円といわれる莫大なESG投資資金を日本に呼び込み、脱炭素化と経済成長を両輪で推進する狙いです。加速が止まらない脱炭素化から、今後も目が離せない状況が続きます。本ブログでは引き続き脱炭素化のエッセンスをお伝えしていきます。
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