思い起こせば、2021年は、昨年末から続いた日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格の高騰によって波乱の幕開けとなりました。今冬の到来を前に、電力ひっ迫を繰り返さないための検討が経済産業省で行われています。最新のリポートをお届けします。
2022年冬の供給力は依然として見通し厳しく
経済産業省は、2011年から毎年、夏と冬の電力需給の状況について検証を行っています。今年5月に発表された、2021年冬の電力需給に関する当初の見通しは厳しいものでした。特に、東京電力エリアでは、2022年1~2月の供給予備率が最低限必要とされる8%を割り込むなど、供給力確保の対策が必須の状況でした。
供給力不足の原因は、主に火力発電所の運転休止や廃炉だとされています。そこで、経済産業省は、全国の発電所の停止時期を調整することで、来年1~2月の供給力を確保しようとしました。2021年9月24日の電力・ガス基本政策小委員会によると、これによって供給予備率は1%ポイントほど向上したものの、まだ8%には届かない水準とされました。
(出典:経済産業省 第39回 電力・ガス基本政策小委員会)
どうなる? 自家発焚き増し要請とkWh公募、今後も注視必要
同委員会で、次なる策として新たに提案されたことが2つあります。
1つ目が、自家発電設備をもつ発電事業者や需要家に自家発電の増出力などを依頼する「自家発焚き増し要請」です。この要請が供給能力であるkWのみを対象とするのか、あるいは電力量であるkWhも含まれるのかは、まだ明確になっていませんが、調整力公募とは別の新しい仕組みとして検討が進むとみられます。
(出典:経済産業省 第39回 電力・ガス基本政策小委員会)
2つ目が、電力量の確保策として提案された「kWh公募」です。将来の電力量(kWh)をあらかじめ約束する仕組みには電力の先物取引がありますが、それを補完する位置付けになるとみられます。「kWh公募」は、冬季の需給ひっ迫が予想される1~2ヶ月前の11月ごろに行うことを想定しています。発電事業者が、追加的な発電の燃料調達のためのインセンティブとして機能するよう期待されています。
「自家発焚き増し要請」や「kWh公募」が実際に行われるのか、また、実施される場合にどのような制度設計になるのかは引き続き注視が必要です。既存の調整力公募や先物取引の枠組みと異なる臨時的な措置となるのか、あるいは今後も続くのかもまだ不透明です。本ブログでは同委員会の検討状況をチェックしていきます。
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