2022年10月現在、非化石証書の価格は、需要家も取引できる「再エネ価値取引市場」と、小売電気事業者のための「高度化法義務達成市場」との間で2倍の価格差が生まれています。資源エネルギー庁では、これを見直しすべきかどうかで、議論が分かれています。
「高度化法義務達成市場」とは
非化石価値取引市場は2021年度から、需要家も取引できる「再エネ価値取引市場」と、小売電気事業者のための「高度化法義務達成市場」の2つに分けられました。そもそも、年間の販売電力量が5億kWh以上の大手小売電気事業者には、2030年までにエネルギー供給構造高度化法(高度化法)によって、2030年までに非化石電源比率を44%に引き上げることが義務付けられています。高度化法義務達成市場とは、小売電気事業者がこうした義務を達成する目的で創設された市場なのです。(参考:非FIT非化石証書、新設のFIP電源でも需要家の直接取引認める方向に | REiVALUE Blog)
一方の再エネ価値取引市場は、企業などの需要家が脱炭素化を目指すうえで、非化石価値にアクセスする手段として整備されたもの。再エネ価値取引市場の取引結果は、2022年8月のオークションでは過去最高の約33億kWhが約定するなど、活況を呈しています。
2つの市場間で非化石証書に2倍の価格差
(高度化法義務達成市場の2022年度第1回オークション結果。出典:資源エネルギー庁)
しかし、高度化法義務達成市場の取引は低調です。2022年8月のオークションでは、約定量が売入札量を大きく下回り、再エネ指定で約3億kWh、再エネ指定なしではわずか400万kWhにとどまっています。さらに、再エネ価値取引市場におけるFIT非化石証書の最低約定価格が0.3円/kWhであるのに対し、高度化法義務達成市場の非FIT非化石の最低価格は0.6円/kWh。つまり、2つの市場間で非化石証書に2倍の価格差が生まれているのです。
高度化法の第2フェーズは単年度評価の方向に
こうした状況を受け、資源エネルギー庁は10月3日、制度検討作業部会の第70回会合において、小売電気事業者が高度化法の義務を達成するにはどのような検討を進めるべきかについて議論しました。今回の会合では、小売電気事業者に対して事前に実施したアンケート結果などをもとに今後の評価方法などについて検討しました。
現在、高度化法では、2020〜2022年度を第1フェーズとして、3年間で非化石価値の達成状況を判断することにしています。しかし、2023年度からの第2フェーズでは、単年度による評価に見直す方向性が打ち出されました。これは、非化石証書のバンキング(繰越)を認めないことや、3年間で評価する場合、最終年度に証書を大量に購入する事業者が現れると証書の価格が釣り上げられることなどの影響から検討されたものです。
非化石証書の価格差は今後の検討課題か
再エネ価値取引市場と高度化法義務達成市場の間での非化石証書の価格差については、今回の会合では結論が出ませんでした。会合に出席したオブザーバーの間でも、意見が分かれる形になっています。
具体的には「高度化法義務達成市場には、需要側のニーズが反映されているとは言い難く、取引が低調となっている。市場間の価格差は、小売電気事業者の負担増につながるため慎重な見直しを望む」という意見がある一方で「長期的には、非化石価値は向上させていかなければならない。米国でも証書は市場によって価格が異なるため、高度化法義務達成市場の価格を引き下げるのは適切ではない」とする声も挙がりました。脱炭素化に向けて小売電気事業における非化石電源の調達比率の引き上げが求められる中、非化石証書をめぐる動きが今後も注目されます。
当社は、再エネ価値取引市場においてFIT非化石証書の取引を仲介する「仲介事業者」として登録されております。(参考『日本卸電力取引所 非化石価値取引会員一覧』)
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