資源エネルギー庁は11月30日、再エネ価値取引市場で売買されるFIT非化石証書について、2023年度からの最低価格を現状の0.3円/kWhから引き上げる考えを示しました。また、現在、無償のトラッキングについても有償化する方向性を改めて明らかにしました。
世界情勢など受け最低価格“引き上げ”の方向
再エネ価値取引市場で取引されるFIT非化石証書の最低価格は現在、0.3円/kWhです。これには、脱炭素経営に取り組む需要家などのニーズを受けて、従来の1.3円/kWhから引き下げられたという背景があります。
しかし、資源エネルギー庁は11月30日の第72回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会で、一転してFIT非化石証書の最低価格を引き上げる意向を示しました。世界情勢の変化などから再エネ価値をもつ証書の価格が国内外で上昇しており、この傾向が今後も続くという見立てから、最低価格の引き上げを検討するということです。
具体的にどれくらいの引き上げになるのかは、今後、議論が進められます。その検討にあたっては、需要家の声、Jクレジットの価格動向、海外の証書価格などを参照すると思われます。足元では、再エネ指定のJクレジット価格が約1.51円/kWh(2022年4月分)と値上がりを続け、また、英国や米国においても証書が高騰しています。こうした状況などを反映しながら、最低価格の引き上げ幅が決定されるとみられます。
(参考:Jクレジットの入札状況の推移(平均落札価格)。出典:Jクレジット制度事務局『J-クレジット制度について (データ集)』)
トラッキング有償化、もしくは電源証明化を検討
FIT非化石証書のトラッキングは、2019年から実証事業として始まり、2022年度初回オークションからは日本卸電力取引所(JEPX)に運用が移管されています。現状の取引状況をみると、トラッキング付き証書に大きな不足はみられません。しかし、今後も着実な増加が見込まれること、都道府県別や電源種別ごとでは需要と供給のバランスが不釣り合いなケースもあることなどから、今後のトラッキングのあり方を見直す方針が示されました。
現行のトラッキングでは、電源の性質に応じた価値の違いが証書価格に反映されていません。例えば、太陽光発電と風力発電とで証書価格が同一だということです。そのため、今後はトラッキング手続きに一定の手数料をとる有償化や、証書価格そのものに差をつける電源証明化を検討する方向性が改めて明らかにされたのです。
実は、有償化などの方向性が提示されたのは、今回が初めてではありません。資源エネルギー庁の制度検討作業部会ではたびたび議題にあがっており、2023年8月から有償化されるという見通しも決まっています。トラッキングの有償化については、こちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。(参考:非化石証書トラッキング、2023年度オークションから有償化? 経産省が案 | REiVALUE Blog)
当社は、再エネ価値取引市場においてFIT非化石証書の取引を仲介する「仲介事業者」として登録されております。(参考『日本卸電力取引所 非化石価値取引会員一覧』)
FIT非化石証書やJクレジットなど、環境価値の取得をご検討の企業さまがおられましたら、仲介事業者である当社がしっかりとサポートさせていただきます。どうぞお気軽にお問合せください!