前回は「J-クレジット制度とは何か」をおさらいしました。J-クレジットの創出と活用にはいろいろな方法があり、エネルギー調達の選択肢が大きく広がることがおわかりいただけたかと思います。そこで今回は、J-クレジット入札傾向や今後の動向を考えます。
J-クレジット入札の最新情報
J-クレジットを購入する方法は、(1)J-クレジット・プロバイダー等による仲介、(2)「売り出しクレジット一覧」掲載クレジットの購入、(3)J-クレジット制度事務局が実施する入札販売での購入の3通りです。このうち(3)の入札は、現在までに7回実施されており、第3回までの動向は以前の記事でお伝えしたとおりです。
第4回以降の入札では、クレジット種別を「再エネ発電」と「省エネ他」に分類し、それぞれ入札が行われるようになっています。落札価格の傾向は、第3回の908円/t-CO2を底値に上昇傾向です。
(出典:J-クレジット制度事務局運営委員会 第19回 資料1)
削減(省エネ)系と森林吸収系由来のJ-クレジットは、電気事業者の排出係数調整のための利用が、7割程を占める状況が続いています。一方で、再エネ由来のJ-クレジットは、CDP質問書のスコープ2やRE100において再エネ電力調達量として報告できることから、ニーズがさらに高まると予想されています。このため、入札価格は今後さらに上がると思われます。2019年9月末現在、第8回目の入札予定はまだ発表されていませんが、本ブログではその状況を逐次お伝えしていきます。
卒FITに伴い「2年前ルール」見直しか
2019年9月19日、第19回目の「J-クレジット制度運営事務局委員会」が開催されました。今年度に入り初めての開催です。議題として、制度文書の改訂や方法論の改定などが挙がりましたが、当社が注目するのは検討事項として掲題された「卒FIT電源等の認証対象化」です。
例えば、新しく太陽光発電設備を設置し、系統電力の代用とする場合は、方法論(再エネ系EN-R-002)のとおりクレジット創出と認められます。ただしこの場合、太陽光発電設備は2年以内に導入されたものとする、いわゆる「2年前ルール」が存在します。つまり2年より前に設置された設備は対象とならず、クレジットの創出は認められないのが現状。
固定価格買取制度(FIT)の対象期間が満了した家庭用太陽光などの設備(卒FIT電源)は10年前に設置されており、現状の「2年前ルール」では対象外となってしまいます。しかし、卒FIT電源であっても自家消費すればCO2削減効果はあるはず。加えて、2019年内に期間満了を迎える卒FIT電源は、53万件という相当な規模です。
このため「卒FIT電源等の導入日に依らず、追加的に導入された設備に対して“2年前ルール”を適用する」ことが検討されました。「追加的に導入された設備」とは、出力制御機能付きパワコンや蓄電池、電気自動車、貯湯機能付きヒートポンプ(エコキュートなど)が例示されています。
このテーマは継続検討とされましたが、もし認められればより多くのJ-クレジットを創出できるようになり、新たなビジネスチャンスになります。J-クレジット制度の最新動向に、引き続き注目していきます。
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