Reivalue株式会社(以下、当社)は2025年4月より、カゴメ株式会社茨城工場において、電気の供給が過剰で再生可能エネルギーの出力抑制が行われるときに、小売電気事業者などの要請に基づいて電気の使用量を増やす「上げDR(デマンドレスポンス)」の実運用を開始しました。発電量に合わせて電気の需要パターンを変化させ、電力需給をバランスさせることで、太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用拡大を目指します。
再エネ出力抑制対策としての「上げDR」の可能性
そもそも、上げDRとは、電気の供給が需要を上回る場合に、小売電気事業者などが需要家に対して電気の使用量を増やすように要請し、需要家の電気の使用パターンを変えることです。電気の供給量に需要量を合わせることで、需給バランスを維持し、社会全体で電気をより効率的に利用できるようになります。
太陽光発電などの再エネ発電には、天候によって出力が左右されやすい特徴があります。近年、太陽光発電の拡大に伴って、日中の発電量が需要量を超え、太陽光発電などの出力が抑制される「再エネ出力抑制」が全国的に実施されています。再エネ出力抑制は、2018年に九州で初めて実施され、2022年から北海道、東北、四国、中国エリア、2023年には中部、関西、沖縄エリアに拡大しました。
再エネ出力抑制は、電力の安定供給のために必要なものです。しかし、再エネの電気をより有効活用するためには、再エネ出力抑制の量を減らしていくことが大切です。
上げDRは、電気が余るときに、あえて電気の需要量を新たに生み出すことで、需給のバランスを維持することに貢献します。また、夜間などの電気の使用量を日中にシフトすることができれば、需要家の全体の使用量を増やすことなく、より効率的な電気の使用方法を実現することができるでしょう。なお、下図の通り、DRには需要を減らす「下げDR」もあります。

(需要制御のパターン。出典:資源エネルギー庁)
夜間の需要をシフトし「上げDR」の実運用を開始

(運用スキーム図)
2025年4月からのカゴメ茨城工場における上げDRでは、小売電気事業者である株式会社グローバルエンジニアリングと電力取次事業者である当社からの要請に応じて、電気の需要量の調整を行います。具体的には、氷蓄熱式冷却水製造装置(アイスビルダー)2台を活用して、電気の需要量の調整を行います。
アイスビルダーとは、蓄熱槽に氷を蓄えることで、冷たい空気や水を供給する装置で、食品を冷却するために使用されます。カゴメ茨城工場では従来、夜間にアイスビルダーを稼働していましたが、今回、稼働のタイミングを任意の時間にコントロールできるように変更しました。これによって、電気の使用量全体のうち約12%を夜間から日中にシフトすることが可能になり、上げDRの要請に応じやすくなりました。
さらなる再エネの社会全体での利用拡大に向けて
当社は2024年3月、カゴメ株式会社、株式会社グローバルエンジニアリングとの間で、出力抑制の対象となる再エネ発電を利活用するため、部分供給(現・分割供給)を活用した「上げDR」の実証を開始しました。
この実証では、カゴメ那須工場・茨城工場で、再エネ出力抑制の実施が予想される土日祝日の日中に、当社が上げDRを要請し、電力需要の創出を試みます。創出された電力需要に対しては、グローバルエンジニアリングが安価に調達した電力を当社を通じて供給することに取り組みました。昨年の実証については、こちらの記事をご覧ください。(参考:当社は、カゴメ、グローバルエンジニアリングと部分供給を活用して電力需要を創出する「上げDR」の実証に合意しました)
こうした実証を1年間行った結果、有効性が確認できたことから、今回、実運用の開始に至りました。当社は今後も、実運用でさらに知見を蓄積し、さらなるDRの実施・検討によって再エネの有効活用に取り組んでまいります。
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