EVはマルチユースの時代へ、新たなビジネスが生まれる
日本の自動車産業の目指すゴール”Well-to-Wheel”
経済産業省・自動車新時代戦略会議において、2018年8月にとりまとめられた中間整理では、日本の自動車産業が目指すビジョンが明らかにされました。このビジョンでは、「世界最高水準の環境性能実現」「車の使い方のイノベーション」「世界のエネルギー供給のゼロエミ化」を通して、究極のゴールとしての”Well-to-Wheel Zero Emission”にチャレンジするというものです。
“Well-to-Wheel”とは、直訳すると「油田からタイヤまで」、自動車のエネルギー効率の指標のひとつです。ガソリンや軽油以外の燃料、すなわち電気や水素を動力源とする場合、それらを生成する際に必要なエネルギーも考慮する必要があるとする考え方です。つまりEVに充電される電気が「何によって発電された電気か」というポイントも評価の対象となります。こうした観点は、事業活動に用いる電気を100%再エネとする「RE100」や「RE Action」にも通じるものがありますね。アメリカはこの考え方を採用し、エネルギーの精製や変換、輸送段階の燃料消費などの段階でのCO2排出を評価しています。
一方、”Tank-to-Wheel”という考え方もあり、こちらは「タンクからタイヤまで」という意味で、自動車単体のCO2排出量を評価する指標です。エネルギーの使用段階の燃料消費に着目した考え方で、より燃費電や電費のよい自動車が求められます。こちらは欧州や中国で中心となっています。
単なる「足」ではない、EVのマルチユース
このビジョンの中で、当社が注目しているのは「車の使い方のイノベーション」。これまでの自動車は移動手段という用途で用いられることがほとんどでした。しかし、これからは複数の使い方のできる「マルチユース」という考え方が主流になると思われます。EVは、定置型蓄電池と同じリチウムイオンバッテリーを搭載しています。電気のみで動くEVは、プラグインハイブリッド車などと比べ蓄電容量も大きいため、「動く蓄電池」としての活用が可能です。
例えば、太陽光発電設備で発電した電気をEVに貯めたり、逆に電気代が高い時間帯にはEVから建物へ電気を供給したり、活用のバリエーションが広がります。また、非常時にはEVからスマートフォンなどへ給電することで、ライフラインの維持にも寄与します。2018年9月に発生した前代未聞の北海道ブラックアウトの際も自家用EVから充電ができ、非常に役立ったという声もあげられています。
移動手段にとどまらないマルチユースのEV。大手電力会社各社は、数年前からEVを用いた実証事業などを行っていました。2019年10月には、東京電力ホールディングス株式会社と中部電力株式会社がそれぞれ出資し、「株式会社e-Mobility Power(イーモビリティパワー)」を設立するなど、EVを取り巻く状況はさらに熱を帯びていきそうです。
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