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同時市場とは? なぜ今、検討が進められているのか

資源エネルギー庁は、電気の効率的な調達や確保を進めるために、「同時市場」の創設について検討しています。同時市場とは、必要な供給力(kWh)や、調整力(ΔkW)などを同時に取引する市場です。今回は、同時市場とは何か、なぜ今、同時市場の創設が検討されているのか、簡単に説明します。



同時市場が検討されることになった背景

(電力システムの目指すべき姿。出典:資源エネルギー庁

 

2020年12月から翌年1月に起こった電力需給ひっ迫や市場価格の高騰、2022年3月や6月に到来した季節外れの寒波や猛暑を覚えている方もいることでしょう。こうした出来事をきっかけに、電気の供給力を十分に確保する重要性が再認識されました。また、太陽光発電や風力発電など、天候によって発電量が左右される変動性再生可能エネルギーの導入を拡大するには、電気の需給バランスを保つための調整力が不可欠です。

 

その一方で、電気の供給力や調整力を確保できればどのような方法でもよいというわけではありません。社会全体としてコストをできる限り抑え、効果的で持続的なシステムを形成しなければなりません。国内の一般送配電事業者は10社ですが、効率化の観点からは、全国で最適な運用ができるシステムが望まれます。



同時市場とは何か

(週間断面から実需給までの一連の仕組みのイメージ。出典:資源エネルギー庁

 

こうした背景から、必要な供給力(kWh)と調整力(ΔkW)を、コストが低い順に調達できる公正な取引の場として「同時市場」の創設が検討されているのです。資源エネルギー庁は、今年8月に「同時市場の在り方等に関する検討会」を立ち上げ、主に、実需給の1週間程度前から実需給までの供給力や調整力を取引する仕組みについて検討を深めています。

 

もちろん、現行の制度でも必要な供給力(kWh)や調整力(ΔkW)を調達する仕組みはあります。供給力(kWh)は日本卸電力取引所のスポット市場、調整力(ΔkW)は一般送配電事業者が行う調整力公募や、送配電網協議会が運用する需給調整市場を通じて調達されています。

 

しかし、これらの市場や仕組みは別々に存在しているため、それぞれの管理者・運営者が異なり、手続きがシンプルだとはいいにくいでしょう。また、米国カリフォルニア州やテキサス州、ペンシルバニア州などの主要な送電事業者(TSO)では、同時市場の仕組みがすでに運用され、全体のコストの最適化が図られています。

 

2024年度内に約定ロジックや費用便益分析を取りまとめ

(今後のスケジュール案。出典:資源エネルギー庁

 

同検討会では、同時市場における約定ロジックの検証や費用便益の分析などを行い、1年程度で取りまとめを行う見通しです。電力広域的運営推進機関を中心として、約定ロジックの精緻な検証や、北米の諸制度との比較など検討が進められると見られます。今後も、同時市場の検討の行方に注目する必要がありそうです。当ブログでは、同時市場の検討状況について、随時レポートしていきます。

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