脱炭素の“戦略”で資金調達するトランジション・ファイナンスとは?
気候変動対策をめぐる動きは、ファイナンスの分野においても多様化を見せています。以前、グリーンボンドやソーシャルボンド、サステナビリティボンドなどのESG債の発行が急増しているというトピックをお届けしました。(参考『加速する“ESG債”発行の動き、国内でも続々と | REiVALUE Blog)今回は、より広義の「トランジション・ファイナンス」について解説します。
「トランジション・ファイナンス」とは何か?
「トランジション・ファイナンス」とは、その名の通り脱炭素社会に向けた移行(トランジション)を促す目的の資金調達を指します。
従来のグリーンボンドなどにおいては、環境関連の事業に投資するというように、資金の使途が限定されていました。一方で、トランジション・ファイナンスは資金の使途を必ずしも特定するものではなく、グリーンボンドとは異なる概念です。
トランジション・ファイナンスにおいて問われるのは、脱炭素経済社会に向けた企業の移行戦略です。パリ協定の温室効果ガス削減目標の水準に沿いつつ、実現にいたる削減手段については限定しません。
つまり、脱炭素を目指す戦略や方向性を明確に打ち出すことができれば、使い道を限定しなくても資金調達が可能になるといえます。
トランジション・ファイナンスに関する国内の動き
国内では、経済産業省が2020年3月に「クライメート・トランジション・ファイナンスの考え方」を発表。「気候変動対策に資するクライメート・ファイナンスの一つとして位置づけ、促進していくことが重要」と述べました。
同年9月には「クライメート・イノベーション・ファイナンス戦略2020」を取りまとめ、トランジションだけでなくグリーンやイノベ―ションを含む大きな枠組みでSDGsの達成を目指すファイナンス戦略を示しました。
これらを受けて、金融庁・経済産業省・環境省は2021年1月から「トランジション・ファイナンス環境整備検討会」を開催し、今年5月に「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」が策定されました。
トランジション・ファイナンスの国際的な位置づけ
この基本指針では、グリーンボンド原則等を公表している国際資本市場協会(ICMA)の「クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック」を参照して、トランジション・ファイナンスを下図のように位置付けています。
(出典:金融庁・経済産業省・環境省『クライメート・トランジション・ファイナンスに 関する基本指針』)
上図から、トランジション・ファイナンスは資金使途の有無を問わず、グリーンボンド原則やソーシャルボンド原則といったこれまでの考え方を一部カバーする広い概念だとわかります。
また「トランジションの4要素」として以下の4点が示されています。トランジション・ファイナンスによる資金調達では、これらの4要素を開示することが推奨されるとしています。
- 要素1:資金調達者のクライメート・トランジション戦略とガバナンス
- 要素2:ビジネスモデルにおける環境面のマテリアリティ
- 要素3:科学的根拠のあるクライメート・トランジション戦略(目標と経路を含む)
- 要素4:実施の透明性
さて、2021年7月1日のBloombergのインタビュー記事によると、三井住友銀行頭取で全国銀行協会の高島誠会長が「『トランジション・ファイナンス』を国内で建設的に進める必要があるとの認識を示した」と報じられています。
ますます活性化が予想されるトランジション・ファイナンス。当社は今後もこうした動向を逐次お届けしてまいります。脱炭素対策をお考えの方は、専門知識の豊富な当社スタッフがサポートさせていただきます。どうぞお気軽にお声かけください!
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