改正省エネ法、デマンドレスポンスの実施回数も評価に組み込む方向
2023年度のエネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)改正に向けた検討で、新たにデマンドレスポンス(DR)の実施回数を評価に組み込むという案を資源エネルギー庁が提示しました。この記事では、2022年10月18日の工場等判断基準ワーキンググループ第2回会合から、改正省エネ法の検討の動向をレポートします。
DRの実施回数を義務付け、定着を図る
資源エネルギー庁は2022年10月18日、工場等判断基準ワーキンググループの第2回会合で、2023年度の省エネ法改正ではデマンドレスポンス(DR)の実施回数を評価に追加する考えを示しました。これは、本来の省エネ法の目的「エネルギーの使用の合理化」に加え、電気需要を最適化する観点から、需給が厳しい時間帯に大規模需要家にDRを促すことを目的としたものです。
前回会合では、係数に「2〜5倍程度の政策的な重み付け」を行い、最適化に取り組むインセンティブとすることが提案されました。ところが、係数を変化させることに委員などから疑義が示されたことで、今回、新たな案としてDR実施回数を評価する案が提示されたのです。
(新たなDR評価軸の提案。出典:資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 2022年度第2回工場等判断基準ワーキンググループ 資料3『改正省エネ法に基づく措置について』より抜粋)
新しい案では、まず、DRに取り組む意識づけの観点から「DR実施回数の報告」を義務付け、より高度な評価として「DRの実績評価を行うための報告」を一部の事業者に任意で認めてはどうかと提案されました。この案が採用されれば、2024年度から報告義務が課されると見られます。
また、電気の需給が厳しい時間帯を「広域予備率5%未満」と見直す意向も示されました。前回会合の案は「広域予備率8%未満、かつエリア予備率8%未満」という複雑なものだったからです。なお、前回会合の内容はこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ、あわせてご覧ください。(参考『【2023年度】改正省エネ法のポイント②/非化石エネルギー転換と電力需要の最適化 | REiVALUE Blog』)
非化石エネルギー転換、中長期計画は2030年を目標年度に
非化石エネルギーへの転換は改正省エネ法の柱の一つです。2023年度は、エネルギー多消費産業の5業種(鉄鋼業、化学工業、セメント製造業、製紙業、自動車製造業)に対して、転換目標の目安を求める方向性が示されています。
今回会合では目標の目安について議論が進み、5業種に対しては、2030年度に向けた数値目標を定めること、中長期計画書を作成、提出することを求めてはどうかと提案されました。また、定量目標の目安を設定する際のオプションとして「エネルギー全体に占める非化石比率」「非化石電気の使用割合」「電気以外の非化石エネルギーの使用割合」を認める案も示されました。これは、非化石エネルギーの使用割合を多面的に捉えるためだとされています。
(非化石転換の定量目標の目安。出典:資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 2022年度第2回工場等判断基準ワーキンググループ 資料3『改正省エネ法に基づく措置について』より抜粋)
改正省エネ法は今後、2023年4月の改正施行に向けて議論がさらに本格化していくでしょう。本ブログでは、こうした検討の動向を逐次お届けしてまいります。なお、本記事の内容は2022年10月18日の工場等判断基準ワーキンググループの検討結果を参照したものであり、議論の動向によっては変更の可能性があります。
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