電気代高騰の背景にある「燃料費調整額」とは? 上限撤廃となるのか
最近の電気代高騰の理由として挙げられるのが、燃料費調整額の上昇です。ここでは、燃料費調整額とは何か、燃料費調整額の上限撤廃の動きについてご説明します。合わせて、大きな話題となっている新電力の撤退の現状についてもリポートします。
「燃料費調整額」とは?
燃料費調整額とは、電気代を構成する要素のひとつ。電力会社は発電のために石炭や石油、天然ガスといった燃料を輸入しますが、こうした燃料の調達コストは世界情勢や為替レートといった外的な要因によって変動します。
そこで、こうした燃料調達コストの変動を電気代に反映する仕組みが1996年に導入されました。それが「燃料費調整制度」です。
現在の燃料費調整制度では、まず、3〜5ヶ月前の3ヶ月間の貿易統計価格などに基づいて、当月の平均燃料価格が算出されます。この平均燃料価格が、あらかじめ決められた基準燃料価格を上回る場合、燃料費調整単価はプラス調整、下回る場合はマイナス調整となります。
つまり、石炭や石油、天然ガスが安いときには燃料費調整単価はマイナスになり、電気代を引き下げます。逆に、燃料価格が高くなると燃料費調整単価もプラスとなり、電気代を上昇させるのです。
燃料費調整単価は電力会社ごとに毎月設定されますが、2021年後半ごろからプラスに転じることが増えてきました。2022年4月1日現在、北海道から沖縄までの大手電力10社すべてでプラスの燃料費調整単価となっています。
さらに、昨今の世界情勢を考えると、今後も燃料調達コストは上がると予想され、燃料費調整単価の上昇もしばらく続くのではないかと見られています。
燃料費調整制度の「上限撤廃」も検討へ
燃料費調整制度では、基準燃料価格の1.5倍が平均燃料価格の上限とされていますが、2022年3月25日の第46回 電力・ガス基本政策小委員会(以下、小委員会)では、この上限撤廃について議論が交わされました。
世界的な燃料価格の高騰を受け、北陸電力・関西電力・中国電力・四国電力・沖縄電力の5社は、燃料費調整額がすでに上限を超えており、超過した燃料調達コストを自己負担している状態とされています。(2022年4月1日現在)
そこで、小委員会では「原燃料費を転嫁しない料金でのサービス継続は持続的とは考え難い」として、規制料金分野における上限価格の撤廃について検討を始める可能性を示唆しました。
一方で、需要家保護の観点から、燃料価格の高騰に比例して電気代が上がり続けるのは望ましくありません。需要家の不利益とならないような制度設計が望まれるとともに、今後もこの検討の行方を注視する必要がありそうです。
新電力の撤退、倒産も相次ぐ
こうした燃料価格や日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格高騰のあおりを受け、小売電気事業から撤退、倒産する新電力も増加しています。
2022年3月30日の帝国データバンクの記事によると、2021年度には31件が小売電気事業から撤退し、14件が倒産したと報じられています。規模の大きいものを挙げると、ホープエナジーが約300億円の負債を抱え3月22日に倒産しました。また、ウエスト電力、エルピオでんきは、2022年4月30日を最後に電力供給を停止するとしています。
さらに、撤退ではなく燃料費調整額の上限撤廃を独自に行う新電力もあります。2022年1月には、Looopでんきが低圧の燃料費調整額の上限撤廃を発表し、楽天でんきも2022年6月から撤廃することを明らかにしています。
このような状況下で、契約する電力会社を切り替えたいという需要家も増えていますが、北陸電力では新規顧客の受付を停止しているとの報道もあがっています。新電力をめぐる混乱が落ち着くには、しばらく時間を要すると見られます。当社では、こうした状況を逐一お届けしていきます。
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